母が認知症になったと気付いた日

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母の様子がおかしいと気付いたのは、約1年前。

「久し振りじゃないの?どうしてるの?」

母からの電話。いつも通りの話の切り出し方だった。

私から母に電話を掛けることは滅多にない。

母からも、ごくたまにしか電話を掛けてこない。

「うん、まあ、いつも通り。」

私は不愛想に答える。特に話すような出来事は何もないから。

それでも母は話し続ける。

「たまには遊びに来なさいよ。

親戚のハッチャンがお菓子を買ってきてくれたから、アンタと孫ちゃんの分も取ってあるよ。」

はいはい、と適当な返事をする私。

母はご近所の小さい子が可愛いとか、いつかまた犬が飼いたいとかたいして内容のない話を数分間続けてから

「たまには遊びに来なさいよ。

親戚のヒロチャンがお菓子を買ってきてくれたから、アンタと孫ちゃんの分も取ってあるよ。」

え?さっきも聞いたけど?

「あ、さっきも言ったっけ?

まあそれより親戚のヒロチャンがお菓子を買ってきてくれたから、アンタと孫ちゃんの分も取ってあるよ。」

この後も、ヒロチャンがお菓子を買ってきた話を延々と繰り返す。

母は元々とても忘れっぽくて、以前から「さっきも聞いたけど答えを忘れた。もう一ぺん教えて。」と同じ質問を繰り返したりは日常茶飯事だった。

でもこんなに間を置かずに同じ話を繰り返すのは異様だと思った。

その数日後、たまたま妹と話す機会があり、母が認知症を発症しているのではと言ってみた。

妹は独立しているが、仕事の合間に実家を訪れることが多く、母の異状にはとっくに気付いていたようだった。

妹は母の

  • 料理自慢だった母が、簡単な料理の作り方を思い出せずに困っていたこと。
  • 同じ話をとにかく執拗に繰り返すこと。
  • 物をどこに置いたか忘れるので、失くしものや探し物が絶えないこと。

こんな様子が気になると言う。テレビの中の話でしかなかった認知症が、急に現実味を帯びてきた。

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認知症検査を受ける気にさせる、うまい言い方

そこで嫌がる母をどうにか説得し、父も一緒に認知症専門病院で検査を受けるように段取りをしたということだった。

「まだ認知症じゃなくても、健康診断的に受けておくといいんじゃない?

無料だし、ご近所のお年よりの皆さんも気軽に受けてるみたいよ。」

こう言うと、母も渋々ながら検査を受けることを承知したらしい。

認知症検査は無料ではない。妹の方便である。

でもこの言い方、結構使えるかも。

ご身内で認知症検査を受けさせたいけど、どう切り出していいかわからない方は参考になさってみてはいかがでしょうか。

「忘れっぽい」なんて次元じゃない

数週間後、母は認知症の初期段階、父は異常なしという検査結果が出たと妹から連絡があった。

症状の進行を遅らせるため、毎日の投薬と月に一度の通院が始まった。

でもそんな話を聞いても、私は楽観的だった。

母は元々とても忘れっぽくて、そそっかしい人だから。

台所で煮物を作っている最中に庭の花壇が荒れていることを思い出し、掃除を始めることなどしょっちゅう。

花壇の掃除に集中して煮物のことを忘れ、お鍋が丸焦げなんていつものことだった。

一緒に外出する際はいつも準備に手間取って、電車の時間ギリギリに家を出ることになるなんて普通普通。

しかも玄関で靴を履いてから

「玄関がホコリだらけだから、ちょっと掃除するわね。」

と箒を取り出し、呑気に履き掃除を始める。

こっちはちゃんと時間を逆算して準備万端整えて待っているのに、と私がキレかけると

「家の中が汚いなんて、私は我慢できないの!だらしないアンタとは違うの!」

と全く方向違いの攻撃を飛ばしてくる。

そんなこんなで、忘れっぽくて要領が悪くて、それなのに私のせいにばかりしてくる母が苦手だった。

だから結婚して家を出てからは滅多に実家を訪れることもせず、電話も用がなければ掛けなかった。

元々忘れっぽくて要領が悪いのが、多少ひどくなった程度でしょ。

私は母の認知症については、楽観的だった。

逆に妹は、両親には悪い印象を抱いていなかった分、母の変化をつらく感じたようだった。

母の刺激になればと、私は当時中学生だった娘を実家へ遊びに行かせた。

帰宅した娘の話では、父も母も久しぶりの孫の来訪をとても喜んで親切にしてくれたとのこと。

だけど娘が気になったのは、みんなで楽しく話している最中に母が

「やすえ?やすえって確か、私の2才下の妹だったかしらね。」

と言い出したことだと言う。

娘は

「おばあちゃん、やすえっておばあちゃんの娘で、私のお母さんの名前でしょ。」

と訂正したけれど、それでも母はよく理解できない風で首をかしげていたらしい。

それ以外は、特におかしい様子はなかったとのこと。

あー、自分の娘の名前を忘れるようじゃ、こりゃ本格的に認知症だなと私もやっと危機感を覚えた。ほんの少しだけ。

「でもまあ、父がまだしっかりしているので安心。今はまだ焦ることはないでしょう。」

妹と私とでは心配の度合いは全く違ったが、当時私たち二人はそう考えていた。

そのしばらく後に父に大変な事態が訪れることなど、私たちは知る由もなかったから。

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