「超展開バレエマンガ 谷ゆき子の世界」感想 悲しい?いえスゴ過ぎるバレエ漫画です

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1970年代、小学館の「小学1年生」などの学年誌に連載されていた谷ゆき子のバレエ漫画シリーズ。

谷ゆき子氏の名は、学年誌を読んでいた40代後半以上の女性なら、なんとなくでも覚えている方が多いのではないでしょうか。

谷ゆき子氏の作品を改めて読んでみると、可憐なヒロインに次々襲いかかる斜め上の不幸に、読者はもう泣けばいいのか笑えばいいのかわかりません。

そしてあれだけ一世を風靡したバレエマンガの復刻版がなぜ発売されないのか、その衝撃の理由もさることながら

谷ゆき子氏の晩年(と言う程のお年でもなかったのですが)の様子に言葉を失いました。

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谷ゆき子の全盛期から数十年後、執念の大人バレエブームが

1970年代には、谷ゆき子のバレエ漫画と森下洋子に憧れて、バレエを習う女の子が多かったのです。

※森下洋子

日本初の世界的バレリーナ。

妖精のように細くはかなげで美しい彼女の姿は、毎日のようにテレビや雑誌を飾っていました。

そしてそれ以上に多かったのが、谷ゆき子のバレエ漫画のヒロインのようにバレエを習いたいのに、親に反対されて習えなかった女の子たち。

彼女たちが大人になり、遠い(?)少女の日の悲願を叶えたのが90年代に巻き起こった大人バレエブームでした。

私も谷ゆき子氏の描く美しく優しく、そして強いヒロインに憧れてバレエを習いたいと親に懇願し、鼻で笑われてしまった少女のうちの一人でした。

そして御多分に漏れず、BBAになってから執念でバレエを習い始めたのですふははは。

毒親に振り回されるけなげなヒロイン

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正月早々不幸のどん底ヒロインと、泣いている娘の横で呑気に新年のあいさつをするママ

とフェレットの後頭部。

「谷ゆき子の世界」では、「バレエ星」を始めとして谷ゆき子氏の代表的なバレエ漫画を取り混ぜて紹介しています。

ママが変な理由を付けて失踪、なぜかバレエ、毒親のせいで余計な苦労が定番設定

谷ゆき子の描くバレエ漫画では、ほぼすべての作品においてヒロインのママがどこかに行ってしまいます。

やむを得ない事情で子供を手放すのではなく、わけのわからない勝手な理由で!

しかも記憶喪失なのに、都合のいいときだけ「思い出したわ。」って、はぁ?

「あなたにはバレエがあるから、もうママは必要ないわ。」

小学生にはバレエよりママが必要だろ!

涙を浮かべながらはかなげに訴える美人のママですが、言ってることってつまり

「私は体調不良で上手に踊れないから、あんたはその人生を全て投げうって私の夢を叶えるのよ。」

めちゃくちゃです、ママ。

小学生だった当時は

「これもママの愛なのね。」

と思いながら読んでいたけど、今読み返すとただの毒親じゃないか!

何も知らない幼い娘に一方的にバレエを押し付けて、自分は好きなところにホイサッサと行ってしまう。

悟空かよ!

しかも小学生の娘(妹がいる場合も)だけを家に残してよ?

私がお隣さんなら虐待で通報したる!

さらには一度死んでも生き返ってきたり、ハイパーな能力が目覚めたり

「娘よ、おめーならきっとバレエが上手に踊れるはず。

だっておめーはオラの娘なんだから。」

という感じのセリフを平然と言い放つママ。

家族を持ったなら、自分の夢やプライドよりも大切にしなければいけないものがあるのだと、ベジータに1時間説教されろ!

こんな身勝手な育児放棄ママの言いつけをしっかり守って、興味もなかったバレエの世界で頑張るヒロイン。

子供だけで生きていこうとするヒロインの自宅に虎が現れたり

計画殺人の被害者になりかけたり

超能力が目覚めたりと

想像を絶する凄絶な展開のバレエマンガ。

これも全てヒロインが立派なバレリーナになるための試練なのです。

こんなトンデモ設定なのに、絵の美しさと可愛らしさに魅せられた読者は全て納得してヒロインを応援してしまうのです。

谷ゆき子恐るべし。

実話を基にした驚愕のバレエ修行

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あああフェレットのしっぽが…。

滝に打たれるのは、かつて某有名バレエ団で実際に行われていたトレーニングの一つだそうです。

本文に掲載されている詳細を読めば、滝修行とバレエの関係性に納得できるような、できないような…。

シュワルツェネッガー主演で映画化できそうなハードアクション

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「バレエ星」には陸上自衛隊のヘリも登場。

かっこいいよヒロインかすみちゃん!

「まりもの星」のヒロインなでしこちゃんは、本番用の衣装とトウシューズを身に付けて断崖絶壁を果敢に攻めていきます。

全ては母とバレエのためなのです。

え、意味がわからない?

お話を読めば納得できます!…多分。

そして遂になでしこちゃんは、変人ママに言われて熊川哲也もアダム・クーパーも絶対にできない超絶バレエテクニックを突然習得するのです。

ノンナも真澄も京極小夜子も六花ちゃんも鯛子もとうてい及ばない、神的アクションバレリーナなでしこちゃん。

あああこんなすごい漫画が復刻されないなんて!!

当時の時代背景も解説されており、今なら奇想天外で奇天烈としか思えないストーリー展開は、実は60年代後半から70年代の日本人が渇望していたものであったということがよくわかります。

谷ゆき子氏の表紙絵やイラスト、文房具も多数掲載

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↑この下敷き持ってた!

谷ゆき子氏はマンガ家としてだけでなく、イラストレーターとしても秀逸でした。

雑誌や文房具に描かれた美麗なイラストは現在も高い評価を得ています。

谷ゆき子氏の膨大な作品データも数ページにわたって掲載されています。

40代50代の女性たちが、幼い日に愛読した作品のタイトルがきっと見つかるはずです。

当時共に仕事をした雑誌編集者やマンガ家たちによる谷ゆき子氏の人となりや作品の解説なども載っていて、読み物としても大変充実しています。

谷ゆき子氏が表舞台から姿を消した理由と、その後があまりにも…

本の終盤では谷ゆき子氏のご子息である俳優の谷垣宏尚氏が、マンガ家引退後の谷ゆき子氏の暮らしぶりを語っています。

自ら第一線から退き、その後はマンガと離れたところで幸せな生き方をされたようですが。

神戸市に住まわれていた頃もあったとか。

ちょうど私も同じ頃に神戸の三宮や垂水辺りによく行っていたので

もしかしたら谷ゆき子氏とすれ違っていたかも?

と考えるとニヤニヤしてしまいます。

宏尚氏は、ゆき子氏引退後の出来事を笑い話として明るく語っていますが、実際にはかなりの苦労があったことは想像に難くありません。

「通信教育」についてのくだりでは、胸を締め付けられました。

「それはなんという…。」

当時谷ゆき子氏と人気を二分していた高橋真琴氏は、谷ゆき子氏の晩年の過ごし方や作品の行方を知って絶句されています。

悔しいです。

あれだけ素敵な作品が、なぜこんなことになってしまっているのでしょうか。

ネットで検索すればたいていの情報が手に入ってしまう現代で

どうしても手に入れることができない、それが谷ゆき子のマンガなんです。

マンガやアニメが日本の重要なコンテンツとなった今、谷ゆき子氏の作品を幻のまま終わらせてしまうのは多大な損失ではないのでしょうか。

この「谷ゆき子の世界」は一人でも多くの人に読んでほしいです。

「谷ゆき子の世界」の売り上げ上がれば、何かが動かせるかもしれません

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2018年6月追記 遂に単行本化が実現!

実現不可能と言われた、谷氏の作品が奇跡の単行本化されました!

素晴らしい!

谷ゆき子氏完全復活!超絶展開バレエ漫画「バレエ星」「まりもの星」単行本発売中!
谷ゆき子氏が生み出した、超絶怒涛のバレエまんがの数々。単行本化は不可能と言われていた谷ゆき子氏のバレエまんがが、約40年の時を経て奇跡の単行本化!単行本第1弾「バレエ星」は重版に次ぐ重版、そして単行本第2弾「まりもの星」が発売されたのです。可憐で美...

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